園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

2021年 11月

育ての心                  園長 佐 竹 和 平 

 以前の園だよりに記したことがあるのですが、身内の誉れなので再び記させていただきます。私の曾祖父、佐竹音次郎は日本で最初に「保育園」を作った人物として「保育の父」と呼ばれています。今から120年ほど前、佐竹音次郎は小児科医院を開院していましたが、いつしか孤児(親のいない子ども)を預かるようになり、その数が増えていく中で、自分が父親となって、妻がその母親となって、その子どもらを育て、共に生活をしていくことにしたのです。自分たちが父母なのだからこの子どもらはもう孤児ではない。そのような思いから当時一般的に使われていた孤児院という名称を使わずに、その施設を保育園と名付けたのです。「保育園」という言葉は佐竹音次郎の造語で子どもが“保(やすん)じて育つ園”ということ。保じてとは安心してという意味です。子どもが安心して、育つ園、これが日本における最初の保育園とされています。

 さて、私の曾祖父は「保育の父」と称されますが「幼児教育の父」と言われる人物がいて、その名は倉橋惣三(1882年~1955年)。日本の幼児教育に大きな影響を与えた彼の墓碑には、下記のような言葉が記されています。

  自ら育つものを育たせようとする心、それが育ての心である。

  世にこんな楽しい心があろうか。

「自ら育つもの」とは子ども自身のこと。子どもには育つ力が具えられています。それを育たせようとする親や教育者の心、このことを倉橋惣三は「育ての心」とし、この「育ての心」ほど楽しい心はないと言っています。

 子どもの成長は身体的に大きくなることだけではなく、出来なかったことが出来るようになる、知らなかったことを知るようになることです。愛情、喜び、悲しみ、共感などを知り心が広くなることです。実際の子ども同士の生活では、けんかもします、仲間はずれもします、悪口もいいます、うそもつきます。怪我をする、風邪やウイルス性の病気になったりもします。親の言うことを聞かないこともあります。このようなマイナスの体験も子どもにとっては次に同じようにならないための貴重なプラスの体験、成長につながります。自ら育つものである子どもにとっては一つひとつの快、不快の体験が大切なのです。このような体験を通じて子どもが育つということを知っている「育ての心」のある大人が周りにいれば、子どもは安心して育って行けるのだと思います。