なでると持ち上がる石 園長 佐 竹 和 平
娘さんが高齢の父親に対して厳しい口調で「お金は渡したでしょ!」と。「何度も同じこと言わせないでよ!」と声を荒げています。どうも、認知症の父親のようで、理解力、記憶力の衰えてきた父親に娘さんはイライラしているようです。娘さんも決して意地悪をしているわけではありません。何度も同じようなことが繰り返される毎日に疲れ、嫌気がさし、どうしても声が強くなってしまったのでしょう。その気持ちはわからなくもないです。けれど、認知症の方は、強く言われた、叱られた内容は忘れてしまっても、「怒られた」「怖かった」「悲しかった」「尊厳が傷つけられた」「できなかった」という気持ちは心に残ると言われます。
この親子の様子を見ていて、以前、テレビで見た「なでると持ち上がる石」という話を思い出しました。その石は、持ち上げる前にやさしくなでると不思議と持ち上げやすく、軽く感じますが、叩いてから持ち上げようとすると、重たく感じて持ち上げにくくなるというのです。実際にテレビの収録ではタレントがそのようにやると、たしかになでると軽くなり、叩くと重く感じたと言うのでした。
本当に石が軽くなったり重くなったりするわけではありません。大切なもの、愛を持って接するものの重みは軽く感じ、愛の無いもの、大切と思わないものは重く感じるということのようです。
このことは、親と子どもの関係、人と人との関係にも通じるように思います。
子どもも、大人から責められたり、頭ごなしに叱られたりすると、自分の力を発揮できなくなります。もちろん叩かれて、その力を発揮するようなことはありません。
「大丈夫だよ」「一緒にやってみよう」「見ているよ」と受け止めてもらえると、挑戦する力、いつも以上の力が湧いてくることもあるでしょう。
もちろん、子どもを育てる中では、特に危険な行為に対しては注意したり、時には厳しく伝えたりすることも必要です。しかし、その土台に「あなたを大切に思っているよ」という愛情が伝わっていることが何よりも大切なのだと思います。
神様は、私たちが何度失敗しても、何度つまずいても、まず愛をもって受け止めてくださるお方です。私たちのことを優しくなでてくれています。その愛によって私たちは生きている、生かされてもいます。私たち大人も目の前にいるお子さんのことを優しく「なでる」ような関わりを大切にしていきたいと願っています。