園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

9月 2024年

子どもの権利条約                 園長 佐竹 和平

 国連が「子どもの権利条約」を定めたのが1989年、日本はこの条約をその5年後の1994年に認めて、条約国となっています。もう、それから30年が経っていますが、日本国内では「子どもの権利条約」についてはそれほど知られていません。日本には戦後の子どもたちの生命や成長、幸福が保障されるよう「児童憲章」が制定(1951年)されていることとも関係がありそうです。

 日本の子どもたちは、その多くが幸福に豊かな環境の中で生活していると思ったら間違いで、国連からは「子どもの意見に対する配慮が欠けている」とのことで改善勧告を受けています。日本は親の意見に子どもが従うのが当然という風土があって、子どもの意見、思いが蔑ろにされているというのです。子どもの権利条約では子どもは、たとえ乳幼児であっても、人権の主体者という考え方に基づいています。したがって、子どもには自分の思っていることを言う権利があり、その意見、考えは年齢に応じて尊重されるべきというのです。日本の児童憲章では子どもは守られるべき存在の範囲ですが、子どもの権利条約では子どもは社会の構成員とされているので意見も尊重されるべきとなっています。

 考えてみると、日本のこの30年間は少子化対策なるスローガンで保育の受け皿の確保、待機児童数の減に取り組んできましたが、これは何も子どもが自身の訴えではないのは明らかです。子ども自身は親と一緒にいたいというのが思い、願いというか、本能なのではないでしょうか。子ども自身の直接的な利益、子どもの意見が尊重される施策があったのかが思い浮かばず、国連からの勧告も納得します。

 子どもの権利条約に関しては全日本私立幼稚園連合会のパンフレットには保護者の皆さんむけに質問交じりの提案がなされています。

・お子さんの睡眠時間は十分に足りていますか?

・普段からお子さんへの指示・命令が多くありませんか?

・お子さんが叫び声を上げることが多いですか?

・テレビやインターネットを観る正しいルールができていますか?

・お子さんとのあいさつや会話を大切にしていますか?

・生活の中に良いこと、楽しいことの繰り返しがありますか?

 大人として、親として、保護者として、人生をより長く生きている者として、子どもを下に見て、その行動、考え、存在を決めつけてしまってはいませんか。子どもの声を丁寧に聞く、その声を受け入れることのできる大人が増えるよう願っています。

2024年 7月

ダンゴムシのための祈り             園長 佐竹 和平

 ドレーパー記念幼稚園には卒業生保護者による後援会というものがあって、幼稚園の活動に関して応援してくださっています。今回、その後援会の小室会長が「保育者の祈り(日本キリスト教団出版局」という本を教職員に各一冊ずつプレゼントしてくださいました。ご自分が読まれてぜひ幼稚園の先生にも読んで欲しいと思われたようです。

 この本にはキリスト教主義の保育の現場で働く職員のためのお祈りの事例がいくつも載っています。最初の事例がページェントの役割を決めるときに保育者が子どもたちと祈る内容ですからまさに、子どもとの生活に根付いた内容が多いです。

なかでも、秀逸だと感じたのが「集められたダンゴムシのために」という祈り。面白いので全文紹介します。

神さま、この、箱いっぱいのダンゴムシたちをごらんください。

園のすみずみから、みんなが集めてきました。

のんびり昼寝していたダンゴムシもいたでしょうし、

おいしいごはんを食べていたダンゴムシもいたでしょう。

わたしたちに友達や家族がいるように、ダンゴムシにも大切な仲間がいます。

ダンゴムシは私たちにかみつくこともなく、爪でひっかくこともしません。

ただ頑張って丸まって、自分を守っています。

あとでダンゴムシたちをお庭に戻します。

ダンゴムシよりはるかに大きなわたしたちが、

この小さな優しい虫を大切にできますように。   アーメン。

 別に子どもたちにダンゴムシを大切に扱って欲しくて上記を紹介したのではありません。この祈りのように、小さなものの気持ちに寄り添うこと、相手の立場になって物事を考えることができることの尊さを覚えて欲しいとの願いによるものです。

 先日、後援会の事業で「こどもかいぎ」という映画の上映会が教会の礼拝堂で行われました。子どもには子どもの価値観があって、その価値観を大人の価値観で是非をしても意味のないことがあることに改めて気づかされた映画でもありました。

 ダンゴムシが大切に思われるように、目の前の子どもも、そして私自身もみんなに大切に思われる、そんな環境の中で子どもを育てていきたいですね。

2024年 6月

上善如水(じょうぜんみずのごとし)       園長 佐竹 和平

先日、園長として、子どもに接することを職業としている者として多いに反省すべき案件が起きました。というより起してしまいました。裸足保育になり天気の良い日は水遊びが園庭で繰り広げられます。午後の園庭での水遊びの時。ある子がペットボトルに入れた水を園長にかけてきました。園長が逃げても、やめて!と言っても執拗に追いかけてきて来て、水をかけてくる。相手が嫌がっているときはやらないんだよと伝えても解ってもらえず、何度も水をかけてくる。あまりにしつこく、私は衣服が濡れて不快なこともあって、正直、少し、というかだいぶイラッとして、園長は反撃にでる。ペットボトルを取り返し、その水をその子どもにかける。と、その子が「水かけられるのイヤだ~」と泣き出してしまったのです。まあ、なんとかその場で泣き止ませはしましたが、子どもを泣かせてしまったのはよくなかったと多いに反省。

保育の現場では「不適切保育」といわれるものがあります。適切ではない保育が日常的に行なわれている施設などでは保護者からの訴えなどで問題になったりもします。その内容、定義としては下記の五つが示されています。

  • 子ども一人一人の人格を尊重しない関わり
  • 物事を強要するよう関わり・脅迫的言葉がけ
  • 罰を与える・乱暴関わり
  • 子ども一人一人の育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり
  • 差別的関わり

これらは保育の現場に限らず、ご家庭の中、親子関係の中にあっても守られなければならないことでもあります。子どもの人格を尊重することが大切です。

 

さて、表題の「上善如水」。この名前のお酒が売られていますが、この意味は、最も善いものは水のようなものである。水は全ての生きるものを生かしている。他と争わない。水は絶えず低いところに行こうとする。人も水と同じように他に恵みを与えながら、争うことなく過ごすべきであるという中国の思想家、老子の言葉とされています。

園長の私は水で争って、子ども(園児)を泣かせてしまったことを多いに反省。「上善如水」 ドレーパー記念幼稚園の教職員一人ひとりが水のような性質でもって、子どもと接して行かなければと心を新たにしています。

2024年 5月

大人は一日に15回、子どもは400回       園長 佐竹 和平

 園庭にいると子どもたちが寄ってきて、園長の背中に乗ってきます。園長の私が背中にだれが乗っているのかわからないふりをしていると、子どもたちはとても喜んで笑ってくれます。園長の私はこれを、来る日も来る日も、もう15年以上、同じことを同じようにやって子どもたちと笑い合っています。

 子どもは本当によく笑います。一説によると、一日に400回も笑うのだそうです。一時間に30回くらい笑っている計算になります。一日中笑っているといっても良いほどです。一方の大人はというと、一日に15回しか笑わないのだそうです。  1時間に1回くらいしか笑わないことになります。ずいぶんと少ない感じがします。

 日常の生活の中にいくつものおもしろいこと、楽しいことを見つけて笑うことができるのが子どもです。とても素晴らしい能力だと思います。子どもの笑うという行為にも成長の段階があって、単純なこと、視覚的なこと、単語で笑う、例えば、机から物を落とすことでも楽しんで笑ったりもします。水たまりでバシャバシャやって喜ぶ子どもの姿もよく見ますよね。保護者としては不快に思うようなことで、子どもが楽しんで、笑っていることはよくあります。こういうのも子どもにとっては成長の一過程ですので目くじら立てないで、成長している最中だなあと喜びをもって見てあげられるといいですね。

 成長につれて、ある一定の条件を崩したことによって起きる笑い、お互いの共通認識、常識を共有していることを前提にした笑いがあります。言葉の言い間違いやいわゆるボケることによる笑いは乳幼児には起こりません。単純な笑いをたくさん経験する中で、少しずつレベルの高い笑いへと向かっていきます。笑えば笑うほど、成長するのです。子どもと一緒に楽しく笑いあえる日々を過ごしていきましょう。

 さて、子どもたちの生活は笑いに溢れていますが、一日に15回しか笑わないとされている大人の、保護者の皆さんの生活はいかがですか。子育てを楽しんでいますか。家族で過ごす時間を大切にされていますか。子どもと同じくらい笑っていますか。何より、自分自身を生きておられますか。

 幼稚園では保護者の活動も始まっていきます。保護者の皆様にはサークル活動や幼稚園の行事に向けてのボランティア活動などで楽しく、笑い合える時間を増やして欲しいとも願っています。

2024年 4月

愛を持って子育て                      園長 佐竹 和平

 自分は神様に愛されている、家族に、お友だちに、先生に愛されている大切な存在だと知ること。自分だけでなく、目の前にいる人、お友だちも同じように神さまに愛され、周りの人から愛されている大切な存在だと知ること。お互いが神さまに愛されている大切な存在なのだから、互いに反目しあうことなく、仲良く、困っていることがあったら助け合うことができる。そういう者となっていって欲しいと願いながら、愛を持って子どもに接するのがドレーパー記念幼稚園のキリスト教育です。 

 一方で保護者の皆さんに愛を持ってお子さんを育てることの大切さを伝えてもいるのです。愛のある子育て、愛のある親子関係、愛のある家族。乳幼児期からこのような環境で育つ子どもは、毎日を伸び伸びと、楽しく過ごすことができるようになります。自分は自分でいい、自分の個性が周りを喜ばせるものであることを知っていきます。乳幼児期のこのような体験、経験がその後の人生の基礎となるものです。愛を持って子どもを育てていきましょう。

 カリキュラムには今月の主題があり、4月は「出会い」となっています。新しい出会いが多く与えられる4月です。様々な出会いがあるでしょう。この出会いこそが人生を豊かに喜びにあふれたものにしてくれます。初めてのお友達、初めての先生。みんなで遊ぶこと、歌うこと、食べることの楽しさとの出会い。子どものみならず保護者の皆様にも新しい出会いが多くあることでしょう。一生の友だちに出会うこともあるかもしれません。新たな自分に出会うかもしれません。園長としては保護者の皆さんにはせっかくドレーパー記念幼稚園に関わっているのですから、聖書、教会に出会って欲しいと願っています。そこに、神様、イエス様との出会いがあり、喜び、祈り、感謝の日々が導かれると私は思います。聖書は昔に書かれた書物です。しかし、その内容は決して古びず、今もそれを読む者に生きる力を与えてくれているので、世界中で読まれているものです。聖書の中にはこのように書かれています「聖書はすべて、神の霊の導きの下に書かれ、人を教え、戒め、誤りを正し、義に導く訓練をするうえに有益です。(新約聖書テモテへの手紙2 4-16)」

 2023年度のドレーパー記念幼稚園の歩みは園児57名とその家族、教職員15名による生活です。園児のみならず、保護者、家族の皆さまにも教職員にも楽しい幼稚園生活となるよう園長の私はこの年も多くの皆様のお力添えをいただきながら幼稚園運営にあたって参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

2024年 3月

キリスト教保育の願い          園長 佐竹 和平

エスキリストを通して示される神の愛と恵みのもとで子どもたちが育てられ、今の時を喜びと感謝をもって生き、そのことによって生涯にわたる生き方の基礎を培い、共に生きる社会と世界をつくる自律な人間として育っていって欲しい。このような願いがキリスト教保育の子ども観です。

 幼稚園の毎日の礼拝では月ごとに決められた聖句(聖書の言葉)をみんなで声を出して言うのです。毎日の聖句暗唱で、キリスト教保育の願いが少しずつ、子どもたちの心と体に行き渡っていったと信じています。年度の終わりに全てを記します。お子さんと一緒に振りかえって頂けたらと願っています。

4月 わたしは よみがえりです。いのちです。

5月 わたしたちは たがいにあいしあいましょう。

6月 ひかりのこどもとして あゆみなさい。

7月 あなたのわかいひに、あなたのそうぞうしゃを おぼえよ。

9月 わたしは ぶどうのき、あなたがたは えだです。

10月 かみは、よろこんであたえるひとを あいしてくださるのです。

11月 いつまでも のこるのは しんこうと きぼうと あいです。

12月 ひとりの みどりごが わたしたちのために うまれる。

1月 あいは けっして たえることが ありません。

2月 さあ、しゅにむかって よろこびうたおう。

3月 すべてのことについて、かんしゃしなさい。

 2023年度のドレーパー記念幼稚園の生活も終わりが近くなってきました。 年長のほし組さんは幼稚園を卒業し、4月からは小学校へ進学。年少、年中は進級となりそれぞれ新しい環境の中での幼稚園生活となります。どのような環境の中にあっても、神様の祝福とお守りをいただいて、子どもたちが安心して生活ができるようにとお祈りしています。

2024年 2月

忘れないで                    園長 佐 竹 和 平 

 讃美歌(さんびか)はキリスト教の礼拝の中で歌われるもので、神様を讃美する歌、神様をほめたたえる歌です。幼稚園でも讃美歌は毎日、子どもたちによって歌われています。何度も歌う讃美歌は幼稚園を卒業した後も忘れずにいて、あの歌、好きだったなあと思い出す卒業生もいます。

「わ〜すれな〜いで〜いつもイエスさまは〜きみのことを〜みつめている〜♪」  2月のさんびかは「忘れないで」です。年長のほし組はこの時期、卒業の言葉も多く聞くこととなり、幼稚園を卒業し、小学校に行くことへの喜びと不安をもって生活しています。年少、年中はそれぞれ進級に向けて、憧れの一つ上のあの色のバッチ、あの色の帽子に期待をふくらましている子もいます。そのような時に、忘れないで欲しいことがあるので、2月にこの讃美歌を歌っています。

 忘れないで欲しいことは、みんなが神様、イエス様に愛され、守られている大切な存在だと言うこと。そして、みんな、一人ひとりが大切な存在で、自分も大切な存在だから、そばにいるお友達も大切な存在、だから互いに愛し合いましょう、仲良くしましょうということ。困っている人がいたら助けてあげましょうということ。幼稚園に在園している皆さんはこのことを礼拝の中で聞き、友だちとの関係の中で体験し、行ってきていたのだから、忘れないでいて欲しいのです。

 いつも忘れずに生活することはできないかもしれません。辛いとき、嫌なことがあったときに、幼稚園での生活、礼拝をしたこと、讃美歌を歌ったこと、友だちとすごした時間を思い出して欲しいのです。それは希望になるでしょう。うれしいときにも思い出して欲しいのです。それは感謝になるでしょう。大切なことを、幼稚園で経験したことを、忘れずに日々を、人生を歩んで欲しいと願っています。

 2月のカリキュラムのテーマは「わかちあう」となっています。集団での生活は「~~しあう」ことが日常です。笑いあって、泣きあって、喜びあって、協力しあって、教えあって、分けあって、時には争いあいもありました。愛しあって、歌いあって、祈りあってもいます。それらは「育ちあう」ということに集約されるかもしれません。わかちあって、育ちあってきた子どたちのこの成長をうれしく思います。

 ドレーパー記念幼稚園で育ちあったこの経験をお子さんのみならず、保護者の皆様もどうか忘れないでいてほしいと願っています。

 

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