子どもの権利条約 園長 佐竹 和平
国連が「子どもの権利条約」を定めたのが1989年、日本はこの条約をその5年後の1994年に認めて、条約国となっています。もう、それから30年が経っていますが、日本国内では「子どもの権利条約」についてはそれほど知られていません。日本には戦後の子どもたちの生命や成長、幸福が保障されるよう「児童憲章」が制定(1951年)されていることとも関係がありそうです。
日本の子どもたちは、その多くが幸福に豊かな環境の中で生活していると思ったら間違いで、国連からは「子どもの意見に対する配慮が欠けている」とのことで改善勧告を受けています。日本は親の意見に子どもが従うのが当然という風土があって、子どもの意見、思いが蔑ろにされているというのです。子どもの権利条約では子どもは、たとえ乳幼児であっても、人権の主体者という考え方に基づいています。したがって、子どもには自分の思っていることを言う権利があり、その意見、考えは年齢に応じて尊重されるべきというのです。日本の児童憲章では子どもは守られるべき存在の範囲ですが、子どもの権利条約では子どもは社会の構成員とされているので意見も尊重されるべきとなっています。
考えてみると、日本のこの30年間は少子化対策なるスローガンで保育の受け皿の確保、待機児童数の減に取り組んできましたが、これは何も子どもが自身の訴えではないのは明らかです。子ども自身は親と一緒にいたいというのが思い、願いというか、本能なのではないでしょうか。子ども自身の直接的な利益、子どもの意見が尊重される施策があったのかが思い浮かばず、国連からの勧告も納得します。
子どもの権利条約に関しては全日本私立幼稚園連合会のパンフレットには保護者の皆さんむけに質問交じりの提案がなされています。
・お子さんの睡眠時間は十分に足りていますか?
・普段からお子さんへの指示・命令が多くありませんか?
・お子さんが叫び声を上げることが多いですか?
・テレビやインターネットを観る正しいルールができていますか?
・お子さんとのあいさつや会話を大切にしていますか?
・生活の中に良いこと、楽しいことの繰り返しがありますか?
大人として、親として、保護者として、人生をより長く生きている者として、子どもを下に見て、その行動、考え、存在を決めつけてしまってはいませんか。子どもの声を丁寧に聞く、その声を受け入れることのできる大人が増えるよう願っています。