園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

2019年 9月 やってみたい

やってみたい                      園長 佐 竹 和 平 

 この度、学研より「佐竹音次郎物語~万人の父になる~」という本が出版されました。佐竹音次郎というのは私の曾祖父です。今から120年余り前、私の曽祖父、佐竹音次郎は鎌倉の腰越で小児科医院を開院していました。時代や土地柄というものがあったのか、いつしか孤児を受け入れ、その数が増えていく中で、自分が父親となってその子どもらを育て、共に生活をしていくことにしたのです。自分が父親なのだから、この子どもらはもう孤児ではない。そのような思いから当時一般的に使われていた孤児院という名称を使わずに保育院と名乗ったのです。「保育」という言葉は佐竹音次郎の造語で“保(やすん)じて育つ”ということ。保じてとは安心してという意味です。佐竹音次郎はその後、キリスト教と出会います。その教え、人を分け隔て無く愛することの大切さを自分自身の行いによって広めていこうとの決意を持って、医業の傍らで行っていた保育院を改め、「保育園」として、本格的に福祉事業に取り組み、身寄りの無い子どもたちの父としてその生涯を送ることにしたのです。保育園とは子どもたちが保んじて育つ、神様から備えられた園というという名称で、これが日本で最初の保育園となりました。佐竹音次郎が存命中に関わった子どもたちの数は、国内外で1万人を超え、11,153人にもなったのでした。現在、佐竹音次郎の出身地である高知県四万十市では佐竹音次郎を「保育の父」として顕彰し、その思いを子どもたち、地域社会に伝えようと活動をされている方たちがおられます。

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ニュースでは虐待によって幼い命が奪われたとの報道が後を絶ちません。また、戦争によって生活の不安が脅かされている人々や貧困によって安心して暮らすことが出来ない子どもたちはたくさんいます。子どもが育つ環境、保育において安心は何よりも大切なことです。安心して食べられる、安心して眠れる、安心して遊べる。親、大人、地域社会、国家がこのような安心を全ての子どもに備えなければならないと改めて思わされます。

さて、今月のカリキュラムのテーマは“やってみたい”となっています。子どもたちにはやってみたいことがたくさんあります。「えんちょうせんせい、なにやってるの~?」子どもたちから言われることの多い言葉です。私が何か作業をしていると近寄ってきて、その作業をやりたがります。やってみないと気が済まないと言ってもいいかもしれません。子どもにやらせると、時間がかかったり、手間が増えたり、危なかったりします。しかし、子ども自身が持つ、やってみたいという主体的な気持ちは子どもの成長にとってとても大切なものです。子ども自身が持つ“やってみたい”に大人が丁寧に寄り添いつつ日々を過ごせたらと願っています。

 

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