園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

2021年 4月

わたしからあなたへ              園長 佐 竹 和 平 

 財津和夫さん作詞作曲による「切手のないおくりもの」。その歌詞の出だしは「わたしから、あなたへ♪」で始まります。とても流行った曲なので合唱などでも歌ったことのある方もおられるかも知れません。4月、新学期になって、この曲のこの出だしだけが園長の頭の中で歌われています。

 社会にあって、人は一人では生きていけません。人と人との繋がりのなかで、関係性の中で生きています。私だけではなく、あなたもいるのが社会なのです。私の人生、私の考え、私が正しいと思うことがあります。一方、あなたの人生、あなたの考え、あなたが考える正しいことがあります。しかし、顧みて思うことは人はいかに「私目線」で、物事を考え、話し、行動しているかということです。そして「あなた目線」を蔑ろにしているのではないかとういことです。「わたしからあなたへ♪」を頭のなかで歌いながら、「私目線からあなた目線へ」、あなたを思いやることを忘れずに過ごして行きたいと改めて思っています。

 ドレーパー記念幼稚園はキリスト教保育連盟に所属しており、カリキュラム(教育課程)はこの連盟の資料に基づいて決められます。4月の主題は「ひとりひとりの名を呼んで」となっています。入園式の日には新入園の子、進級の子が担任から名前を呼ばれました。年長さんから一人ひとり名前を呼びます。呼ばれたことに対して「はい!」の返事をそれぞれの方法でする年長の子どもたち。年長の次は年中さん、年少さんです。新入園の子もいます。新入園の子は名前を呼ばれて、手を挙げて返事をするという経験をしたことの無い子もいたことと思います。でも、初めての経験ながらできてしまう子もいます。他の子がやっているのを見て、真似してできるのです。これが集団での学びの一つの成果です。

 幼稚園では子ども同士、教職員とのたくさんのかかわりの中で様々な体験をしていきます。その一つひとつが子どもにとっては初めてのことです。初めてなので上手くいかないこともたくさんあります。でも、経験がないから上手くいかないだけです。1回、2回、3回と出来なかったとしても、その出来なかった経験も積み重ねて、いつのまにかできるようになるのです。保護者の皆さんは焦ることなく、お子さんをよく見て、お子さんの気持ちに寄り添い、頑張っている姿を褒めて、励ましつつ過ごしていきましょう。

 楽しい幼稚園生活を通じてお子さんの豊かな成長が導かれます。その成長を保護者、教職員とが共に喜びあえるよう願っています。

 

 

切手のないおくりもの # 財津和夫 - YouTube

 

 

2021年度 教職員

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2021年 3月

希望をもって                  園長 佐 竹 和 平 

 新型コロナウイルスに翻弄されたこの一年でした。不要不急の外出を控える、テレワーク、ステイホーム。この一年はお家で、家族だけで過ごす時間が多かったことでしょう。この貴重な時間を喜んで過ごすことのできている家族もある一方、残念ながら楽しく、喜んで過ごすことができない家族もいるようす。一緒にいる時間が長くありすぎてかえってイライラするといったこともあるようです。そんな家族の中で過ごす子どものことを思っていたら、子育てに関する本として世界的なベストセラーの「子どもが育つ魔法の言葉」を思い出しました。

 この本の最初には「子は親の鏡」という詩が紹介されていて、この詩に基づいて、子どもが幸せになるには親、家族はどうしたら良いのかを教えてくれる本です。この機会に少し紹介させていただきます。

 親と子どもとの関係においては親は子どもをけなさない、馬鹿にしない、叱りつけてばかりいないとあります。子どもの日々の生活する様子、朝起きてこない、ご飯を食べない、夜寝ない、だらしない、行動が遅い。そんな場面があるかもしれませんが、子どもをけなしたり、馬鹿にしたり、しかりつけてその状態が改善されることはありません。そのような時こそ、親は子どもを励まし、誉め、愛し、認めて、見つめてあげることが必要です。親自身のことでは親が不安な気持ちで子どもを育てない、他人を羨んでばかりいない、正直に生きる、子どもに公平に接するとあります。子は親の鏡ですから、親の姿のままに子どもは育ちます。

 詩の最終節に『和気あいあいとした家庭』が大切とあります。そのような家庭で育つと子どもは、『この世の中はいいところだと思えるようになる。』とあります。家族そろって会話のはずむ食卓を囲んでいるイメージがわいてきます。みなさんの家庭はいかがですか。

 3月のカリキュラムのテーマは「希望をもって」とあります。年長児は幼稚園を卒業し小学生になります。不安な気持ちもたくさんある一方、新しい環境に期待に胸を膨らませている子どもの姿があります。年少、年中の子たちはそれぞれ進級し年中、年長になります。バッチの色、あのお兄さん、お姉さんたちが着けていたバッチの色にあこがれを持っています。小さい子が入園してきたらお世話してあげようと思っている子もいます。

 卒業、進級するそれぞれの子どもたちがどのような環境にあっても「希望をもって」過ごして欲しいと願っています。

2021年 2月

つながる  ~愛~             園長 佐 竹 和 平 

 2月の主題は「つながる」となっています。幼稚園で「つながる」と言えば、場所の移動の時に年少のひよこ組さんが電車になって、つながって移動する場面があります。  

 おもちゃの電車やミニカーを連結させたりの遊びもあります。これは物理的(空間的)なつながりということになります。他には時間的なつながりもあります。毎日の積み重ねがあって、今日の1日があります。一年前はイスに座って人の話を聞くことができなかった子どもたちが、一年経って、イスに座って人の話を聞けるようになっています。入園当初は自分の言いたいことも言えませんでした。少しずつ自分の言いたいことが言えるようになって、更に、他の子の意見とも調整をつけられるようにまでなっている姿があります。突然に今日の姿が現れるわけではありません。つながっているのです。昨日があって今日があり、今日があって明日があります。時間的なつながりは成長の姿を現しもします。

 

 さて、もう一つの「つながり」は精神的なつながりとなります。心と心のつながりです。お互いが信じ合うことです。キリスト教ではこのことを「愛」と言います。

「わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である。人がわたしにつながっており、わたしもその人につながっていれば、その人は豊かに実を結ぶ。」と聖書(ヨハネによる福音書15章)に記されています。イエス様はご自分のことをぶどうの木にたとえ、私たちにこのぶどうの木につながっていなさいとおっしゃいました。「人がわたしにつながっており」で物理的なつながりを示し、「わたしもその人につながっていれば」で精神的なつながりを示し、最後の「その人は豊かに実を結ぶ」で時間的なつながりを示しました。「豊かに実を結ぶ」までのつながり合うことの大切さを表しています。

 幼稚園では一年の終わりに、保護者、教職員による文集「ぶどうの木」を毎年、発行しています。タイトルは上記の聖書箇所によるものです。ぶどうの木は子どもと保護者と教師、幼稚園の今までのつながりを確認し、その成果を喜びあうものにもなっています。何年かして、お子さん自身が大きくなり、ご自分でその文集を開くときが来るかも知れません。そのときに改めてお子さん自身がつながりを、愛を再確認するかも知れません。時を経て、ぶどうの木がつながり、愛を蘇らせるのです。とても素敵なことだと思います。

ドレーパー記念幼稚園は多くの実をもたらす、つながり、愛を大切にしたいといつも願っています。

 

 

 

2021年 1月

あなたと共にいて、あなたを守って下さる神      園長 佐 竹 和 平 

 

 昨年の暮れにドレーパー記念幼稚園の設立時、草創期に大変なご尽力をいただいた乙幡(おつぱた)義子(よしこ)先生が92年のこの世での生涯を終えられ天に召されたとの知らせがありました。義子先生は当時の大塚平安教会の乙幡和雄牧師の婦人で、幼稚園設立時の園長となられた方です。

「見よ、わたしはあなたと共にいる。あなたがどこへ行っても、あなたを守る。」

 この言葉は義子先生が親しんだ聖書の箇所、創世記28章15節です。イサクの子、ヤコブが大きな過ちを犯し家族から逃亡し悲嘆に暮れ、荒野で石を枕にして寝ていた際の夢に神が現れて言われた言葉です。神様はあなたが罪を犯して苦しんでいるとき、病気と闘っているとき、逆境のなかにあって悲しんでいるときはもちろん、喜びの時、神なんか必要ないと思い上がっているような時にも、共にいてくださって、守ってくださるとの何とも心強い、神様の恵みに満ちた言葉を伝えている個所です。

 幼稚園設立時のことを振り返っておきます。1961年、今から60年前の4月に大塚平安教会に聖書神学校を卒業したばかり、まだ30歳に満たない乙幡和雄牧師が義子婦人とともに赴任して来られました。教会は当時、礼拝出席者が13名程度の小さなものでした。その教会が幼稚園を設立しようと既に決めていたのです。乙幡牧師は牧師として教会に赴任してきたのであって、幼稚園をやるために来たのではないと・・・当初は幼稚園設立に反対。一時は牧師辞任まで決意されましたが、様々な方々のご助言、神様のお導きもあって幼稚園設立に向けて尽力するようになりました。園舎はありません、園庭もありません、お金もありません、教師はいません。しかし、開園は翌年の4月と決定されています。そのような厳しい状況のなかで幼稚園設立に向けて奮闘する牧師を婦人として支えつつ、ご自身は当時、町田の幼稚園で教諭としてお働きだったので、その見識から新しく設立する幼稚園の教育方針を牧師、初代主任となる有村節先生(故人)とともに考えられたのです。設立時から心身に障害を持つ幼児を受け入れるなど60年前の当時としては画期的な取り組みもされています。多くの皆様の協力を得てなんと、当初の予定通り1年後、1962年4月10日に最初の入園式が行われました。義子先生はその日を妊娠9か月目で迎えたのでした。この日から教会の礼拝堂を教室として、53名の園児からなるドレーパー記念幼稚園の愛に満ちた生活が始まったのでした。

 聖書は神様の愛を示してくださる書物です。年初にあたって、天に召された義子先生から「あなたと共にいて、あなたを守って下さる神」が示されました。子どもたちにこの神様の愛を、あなたは神様に守られている大切な存在であることをしっかりと伝えていくことの大切さを改めて決意するものです。

 

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最初の入園式の日。左は主任教諭の有村節先生(故人)、右が義子先生。

 

 

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旧園舎の定礎の日に。石板を持っておられるのが乙幡和雄先生。

その右隣りで乳児を抱えておられるのが義子先生。

 

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最初の卒業生の記念写真。



 

 

 

2020年 12月

子どもの幸せ                 園長 佐 竹 和 平 

 ユニセフが9月に発表した今年の「先進国の子どもの幸福度ランキング」では日本は38カ国中総合20位でした。このランク付けには3つ項目があります。日本は「身体的健康」1位、「スキル」27位、「精神的幸福度」37位でした。スキルの分野では数学・読解力で基礎的習熟度に達している15才の割合が全体で5位なのですが、社会的スキルが37位と低く、スキル総合で27位となっています。社会的スキルの中では友だちを作るのが苦手と答えた子どもが多かったようです。その人の個性や環境にもよるので、一概には言えませんが、何かこの答えの中には「いじめ」「差別」「貧困格差」のような子どもを取り巻く環境の生きにくさがうかがえます。一方で幼児期、学童期に人との関わりの中で学んでいく社会性を身につける機会を大人社会が喪失させた結果のようにも感じられます。精神的幸福度は生活全般への満足度を10点満点で6点以上と答えた子ども(15才)が62%で、この数字が低く37位となっています。結果を端的にまとめると日本の子どもは身体的には恵まれていて、勉強はできるけど、友だちを作るのが苦手で、生活に不満を抱いている子どもが多いということです。非常に残念な結果ですが、今の子どもたちの姿を現わすレポートです。

 このような現実を思うと、目の前にいる子どもが自分は幸せだと思って日々を過ごし、成長していって欲しいと願わざるを得ません。そのためにできることは家庭にあってはお子さんとの時間を大切にすること。一緒に遊び、一緒に食事をし、会話を楽しむ。健康的な生活習慣を身につけるようにする。幼稚園では子ども自身が主体的に遊び、その遊びに没頭できるような環境をつくること。遊びを通じて社会性、人と人との交わりを学んで行けるようにすることです。家庭でも幼稚園でも子どもが安心して生活ができ、楽しいと思って日々を過ごす中で子どもの自己肯定感、満足感が高まっていくのです。

 12月となり幼稚園ではページェント、クリスマスに向けての活動が始まります。クリスマスは神様が私たちに下さった最高のプレゼントであるイエスキリストの誕生を喜び、祝うものです。それと同時に神様がイエス様を通じて世の人々に伝えたかったことを学ぶときでもあります。神様はご自分がつくった地上に住む人々の心が荒れすさんでいるのを悲しみ、自分の独り子イエスキリストをヨセフとマリアを通じてこの世界に贈ってくださりました。それはイエスキリストが救い主となって荒れすさんだ世の中を良くしようと神様が考えたからです。そのイエスキリストが人々に伝えたのは「神を愛しなさい」「隣人を自分のように愛しなさい」という教えなのです。

 神様、イエス様の思いを子どもたち、保護者の皆様と共有しあいつつクリスマスを迎えたいと願っています。 

2020年 11月

豊かな感性と表現             園長 佐 竹 和 平 

 園庭のけやきの木の葉は夏には暑い日差しを避けるように大きな日陰を作ってくれます。秋になると少しずつその葉は落ち、冬には日差しが当たりやすくなるように葉がなくなります。落ち葉の余りの多さに恨めしく思うときも正直ありますが、神様の造られた自然の恵みを感ぜずにはいられません。

 この時期、子どもたちは園児フェスティバルに向けての活動に取り組んでいます。以前は子どもたちの製作物の発表として作品展を行っていました。子どもの作品、特に個人の作品を家族の方に見ていただく催しで、行事としては「個」「静」なるものでした。作品の前には個人の名前を記し、だれが作った物かがわかるようにしていました。園児フェスティバルは、もっと子どもたちのことを知ってもらいたい、幼稚園の生活の中で活き活きとしている様を見てもらいたいとの思いで始めたもので「集団」「動」なる催しです。子どもの動き、コミュニケーションが大切な催しとなっています。作品はたくさんありますが個人の名前は出てきません。

 幼稚園教育要領に示されている幼児期の終わりまでに育って欲しい10の姿の1つに「豊かな感性と表現」があります。そこには「心を動かすできごとに触れ感性を働かせる中で、さまざまな素材の特徴や表現の仕方などに気付き、感じたことや考えたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりし、表現する喜びを味わい、意欲を持つようになる」と示されています。

 園児フェスティバルに向けての活動はこの「豊かな感性と表現」の宝庫です。「表現」とは歌や絵、作品によって現わされるものだけではありません。日常の生活の中で自分自身の考えていることを表出することも含まれます。話すことができない赤ん坊は泣くことによってお腹がすいたこと、オムツが濡れていることを表現します。成長にともなって少しずつ表現する力がつき、幼稚園では自分の考えを出して、みんなの意見との中で折り合いまでつけることができるようになっています。それはこの間にはいくつもの「心を動かすできごと」を体験してきたからこそともいえます。道ばたに咲いている小さな花、そこにいる小さな生き物に感動するといったちょっとした体験の積み重ねが成長に繋がっているのです。

 今年は新型コロナウイルスの影響で密を避けることが求められており、例年は1日での開催だったものを2日間に分けての開催とします。自分たちで出し合った意見、アイデアを共感しあい、仲間と造りあげていく園児フェスティバルです。子どもたちの表現にたくさん気づくことができる時となるよう願っています。

2020年 10月

楽しむ                   園長 佐 竹 和 平 

 

 運動会を通じてクラスという意識を子どもたちが持つようになり、今まで以上に幼稚園での生活、クラスでの活動にぐっと奥行きがでてくるようになるのがこの時期です。益々、楽しい幼稚園生活を子どもたちと共に過ごしていけるよう願っています。

 さて、今月のカリキュラムのテーマは「楽しむ」となっています。幼稚園の子どもたちの生活は楽しいことであふれています。子どもは楽しむことの才能にあふれています。一日に何度も楽しくって笑っている子どもたちです。保育後の職員室、教職員による日誌などでは子どもたちの楽しかった姿を教師が報告しあっています。そして、明日もまた、子どもたちと楽しく過ごせるよう思いを巡らせています。

「手を抜くと楽になる、手を加えると楽しくなる」という表現はもうずいぶん前に講演で聴いて、以来、ずっと忘れないでいる言葉です。人は人生を楽しむためにこの世に命を与えられます。しかし、子ども時代はそれほど意識しなくても楽しく過ごせるのですが、大人になると人生を楽しくするためには意識、努力が必要になります。易きに流れ、手を抜けば楽になるかもしれませんが、そこには楽しさが生れず、後に苦労が生れることもあります。加えるべき所ではしっかりと手を加えて楽しい人生にしたいものです。

 ドレーパー記念幼稚園のお母さんたちは上手に手を加え、楽しむことができるお母さんだと私は思っています。毎日のお弁当は時に大変なときもあるでしょう。給食だったら楽なのに、楽ではないお弁当の幼稚園を選んで下さったのがドレーパー記念幼稚園のお母さんたちです。お弁当は楽しいです、喜びに溢れています。ドレーパー記念幼稚園は保護者の活動、サークル活動が活発ですがそのような活動もやらなければ楽です。でも、やれば、お友達もできるし楽しくなります。ドレーパー記念幼稚園には楽ではないことがたくさんありますが、そのことは手を加えられることがあるということ、楽しいことがたくさんあるということです。親子の関係ではお子さんの話しを聞き流す方が楽かもしれませんが、しっかりと聞いてあげましょう。話を聞いてくれれば子どもはうれしい、楽しいです。そのことは親にとっても、うれしい、楽しいことのはずです。ぜひ、楽ではないことを楽しんで欲しいと思っています。

 そうは言っても子育ては大変なことも多いです。上手に手を抜いて、時には家族や友だち、教職員を頼ったりして楽をすることも必要です。全てに手を加えていたら疲れてしまいます。時には手を抜き楽をして、上手に手を加えて楽しむ。そんな子育てができたら素敵ですよね。