園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

2016年 7月 探求

 文部科学省では幼稚園教育要領の改善を図るための検討会議を開いています。今の時代、社会の中で子どもたちの成長を導く教育環境を少しでも良くしようとの試みです。その議論の中で幼児期に備えられるかどうかで大人になってからの生活に大きな差を生む大切なものとして取り上げられている「非認知能力」について紹介しておきます。

 小学校では国語、算数、理科、社会などの科目があり、それぞれ学びの中で覚えることがあります。覚えたことを基に問題を解く力も求められます。このような知識や知能のことを「認知能力」といいます。中学、高校、大学もこの認知能力を高めるために勉強する場ということになります。テストや受験などは認知能力を確かめるために行うものです。この認知能力を高めるためにとても大切で、社会の中で自立した人間として生活していくのに大切な能力として近年、注目されるようになってきたのが「非認知能力」です。「思いやり」「協調性」「自制心」「自尊心」「やり抜く力」「意欲」「社交性」「勤勉性」「信頼」などの能力のことを言います。幼稚園はこれらの能力、人格形成の基礎を、遊びを中心とした生活の中で身に着けていく場所であるようにというのが今回の幼稚園教育要領の改善の大きな柱となっています。

 私はこの話を知った時に、幼児教育におけるキリスト教という基盤を持つ幼稚園、ドレーパー記念幼稚園が創立以来ずっと大切にしてきたことだと思い、大いに共感しました。日々の子どもたちの生活の中にある礼拝、説教、聖書の言葉、讃美歌、お祈り、献金、遊びの中での友だちとの関わり、保育者の丁寧な優しい声掛け、毎日の絵本の読み聞かせ・・。これらのことが「非認知能力」をしっかりと育んできたと思ったからです。残念ながらこのことを理解できず、幼児期のせっかくの集団での生活の場所なのに小学校で学ぶこと、国語や算数を事前に教えることをを良しとする幼稚園もあります。このようなことを幼児に覚えさせると、覚えさせられていない幼児と比べて一時的には優位に立ちますが、小学校の3年生くらいでは一緒になってしまうと言われています。一時的な認知能力を高めるために幼稚園での大切な時間を使うのではなく、学びたいという意欲を持てるようにする、学びをやり抜く力、学びのために自制する力を育むために幼稚園での時間は使われるべきという考えが新幼稚園教育要領にはあります。

 今月のカリキュラムのテーマは「探究」となっています。これも非認知能力です。6月が「関心」となっていました。子どもが関心を持ったことの中にある、なぜだろう、知りたい、わかりたいという思いや、未知なもの、新しい関心を探したいという子どもの思いを大切にしていきます。保護者の皆様も子どもたちのそのような姿、関心、探求の姿を見たときは面倒がらずに一緒に共感し、上手にその子どもの思いを育んでいけるようにできるといいですね。