園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

2017年 9月 試行錯誤

                    園長 佐 竹 和 平 
 夏休みの思い出がたくさん詰まった思いで帳をみさせていただくのが9月の楽しみです。おじいちゃん、おばあちゃんの家に行ったこと、花火を見たこと、相鉄線のスタンプラリー、恐竜展など・・今年の夏は雨の日が多くありましたが、それぞれ楽しく過ごされた様子がうかがわれます。様々な経験をしたこともあってか、子どもたちは夏休み期間中にずいぶんと成長したようです。

 今月のカリキュラムのテーマは「試行錯誤」。元々はアメリカの心理学者が「Trial and error」という人間の能力獲得の過程に関する学説を打ち立てたその訳語です。試してみる、失敗するという意味です。人間は何かの能力を身に着ける際には試してみて、失敗をして、また試してみて失敗をして・・その多くの失敗の中に偶然に成功が現れると、その成功を反復して行うようになるという学説です。発明家のエジソンの言葉には「それは失敗じゃなくて、その方法ではうまくいかないことがわかったんだから成功なんだよ。」とあります。赤ちゃんがハイハイをして、立って、歩くようになる。子どもの成長過程を思い起すとまさに失敗、失敗、失敗・・試行錯誤です。しかし・・いつの間にか出来るようになっていきます。失敗が大切なようです。

 「ほめるのは1秒以内、怒るのは3秒待って」ということを学びました。子どもの良い姿を見たときはその瞬間にほめてあげましょう。一方で怒りたくなる場面があったら3秒待って・・冷静に対応しましょうということ。失敗したからと行ってすぐに怒っていては子どもは失敗するのが恐くなって失敗しそうなことはしない、試行をしない子どもになってしまいます。子どもの失敗をいつか出来るようになるための成長の過程と思い、温かいまなざしで見守れるようだといいですね。

 2学期が始まりました。行事も多く、子どもたちの幼稚園生活がいよいよ充実してきます。保護者の皆様にもご理解とご協力をたくさんいただかなければなりません。試行錯誤が深まる2学期でもあります。共に試行錯誤の時を楽しく過ごしていきましょう。

2017年 8月 ゆったりと

  
ゆったりと                       園長 佐 竹 和 平 

 児童精神科医佐々木正美先生が6月にお亡くなりになられていたことを遅ればせながら知り、その著書「子どもへのまなざし」を改めて読み返してみた。この本は1998年に発行され、子育てに悩む多くの親を励まし、勇気づけベストセラーとなった本です。佐々木先生による子育ての要諦は「過保護は良い、可能な限り子どもの満足を親がかなえてあげようとすることは子どもの現状を肯定することにもなる。子どもは自分が良いものとして育てられるので自立心、自尊心のある子に育っていく。しかし、過干渉はいけない。子どもがやりたいことをやらせないで親がしてしまう、子どもがやりたくないことを親がさせてしまうのは子どもの現状を否定していることになる。このように育てられた子は自分っていいなぁという感情、自己肯定感が育まれないため健やかな成長が見込めなくなる」というものです。

 過保護と聞くと必ずも良いイメージがないかもしれません。甘やかして育てるといった印象があるようです。しかし、上記したように過保護と過干渉の違いをしっかりと認識して、大切なお子さんを自信を持って過保護に育て、自己肯定感のある子、自分って良いなと思いながら育つ子にしていきましょう。

 今月のテーマは「ゆったりと」となっています。8月は夏休み期間中ですから、ご家族とゆったりと過ごして欲しいという願いでしょうか。佐々木正美先生の言葉に『ぶったり、無視することは子どもたちを否定することですね。これは誰でもわかります。しかし否定とはそれだけではありません。子どもの個性を認めない。「早く!」と言い続ける。あるいは「もっと、もっと」と過剰に期待をする。そういったことも否定です。子どもは、自分が否定されていると感じます。』とあります。親としては子どもに期待することが大きくもあり、結果として子どもをせかしたり、短所ばかりに目が行き怒ってばかりということもあるかもしれません。ゆったりとした気持ちになって、子どもの良いところに目が行くようになれるといいですね。

 さて、いよいよ、2学期が始まります。行事も多くあり、子どもたちにはやらなければならないことがたくさんあります。しかし、やらされてその行事の日を迎えるのではなく、やりたいことをやった結果としてその行事を迎えられるように教職員一同が力を合わせてまいります。保護者の皆様にも引き続き、多くのご理解とご協力をいただくことになります。どうぞよろしくお願いします。

2017年 7月 気持ちよく

                       園長 佐 竹 和 平 
 80歳になる私の母がこの度、自分の人生を綴った本を出版しました。「あなたに平安がありますように(大空社出版):佐竹順子」。キリスト者としての歩み、社会福祉事業へのかかわり、7人の子育てなどについて記した本です。園長の私は7人兄弟の6男、下に弟がいて、全部で7人、みんな男です。6男の私までは年子です。せっかくなので母の本の中で、子育てで大切なこととして記されているもののいくつかを紹介させていただきます。

・子どもと接するときは、決してイライラさせないように心がける。ゆったり受け止める。
・決して過干渉にならない。
・自分で考えて判断できるようになるために子どもの人格を信じ、信頼関係を築く。
・親としての最も重要な役目は子どもの背後で祈ること。

 改めて、思い起こすと、幼少期、思春期と今日にいたるまで、私は母に叱られたことがありません。きつく注意されたこともありません。以前紹介した、幼稚園教育要領の改正では「「教師は幼児との信頼関係を十分に築き、幼児が身近な環境に主体的に関わり・・」とありますが、母の本の中に同じような記述があることに驚かされます。

 子どもはその多くを大人に依存していますが、成長するにつれ自立していく必要があります。そのときに必要な能力が主体性、自らの意志や判断に従って行動できる能力です。大人が子どものためと思って何でも手出し、口出しをし、過干渉になると、子どもの中に本来ある主体性が芽生えていきません。子どもとの信頼関係を築きながら子どもの姿を励ましつつ、背後にあって、見守り、祈ることでこの主体性が伸びるのを待ちましょう。

 さて、7月のカリキュラムのテーマは「気持ちよく」です。7月ということもあり水遊びをイメージするテーマでしょうか。水や砂、土の感触で気持ち良いと感じる子どもたちです。でも、「気持ちいい」ではなく「気持ちよく」がテーマとなっているので、どうやら水あそびだけを意識したものではないようです。友だちとのこと、クラスのこと、家族、夫婦、職場・・「気持ちよく過ごす」ために一人ひとり、自分に何が出来るか、何に注意を払う必要があるのかを改めて考えるよい機会としていきましょう。

2017年 6月 不思議

                       園長 佐 竹 和 平 
 子どもの成長を導く道標として定められているカリキュラムの今月のテーマは「不思議」となっています。子どもたちには不思議だなと思うことを経験しながら、その不思議なことの意味を自分なりに解釈する経験をしてもらいたいと思います。
子ども自身が不思議だなって思ったことを、子どもが持つ豊かな想像力で自分なりの答えを考え出す経験です。

 どうして雨ってふるんだろう?大人が子どもに質問するのではなく、雨の日で外で遊べない、つまんない。なんで雨って降るんだろう?そういう自分の中からでる不思議だなと思う気持ちが大切なのだと思います。「神様が泣いているのかな・・それとも神様のおしっこ・・!?・・もしかしたら、昨日、友だちに意地悪なことしたから神様が怒っているのかも・・」子どもはそんな風に考えるかもしれません。
この答えを否定する必要はないかと思いますが、状況によっては、その不思議なことの意味を大人が説明すること、調べる方法を教えてあげるのもいいことです。
子どもの持つ探究心の芽生えを導くことは、生きる力を育てることになります。
不思議だなって思う気持ちが「自分から進んで学ぼうとする」「考えたり工夫したりしようとする」「相手の立場になって考える」などにつながっていくのです。

 新学期から2ヶ月が過ぎ、子どもたちの幼稚園での生活も充実しているようです。朝、喜んで登園してくる子どもたちの姿がうれしいです。今日は先生は何をしてくれるんだろう?今日は何して遊ぼうか・・、誰と遊ぼうか・・、誰と一緒に座ろうか・・。様々な思いで登園してくるその子どもたちの思いに応えていけるように教職員一同、心を合わせ、祈りつつ日々の保育に取り組んでいます。

 保護者の皆さまの中には、新しい環境の中で戸惑いも多くあった4月、5月かと思います。家とは明らかに異なる子どもの姿を見て、聞いて驚かれている方もいるでしょう。お子さんのことで不安や疑問などありましたら、遠慮なく教師にお尋ねください。
保護者と幼稚園が協力し、情報の交換をしあいながら子どもの成長を導いていきましょう。

2017年 5月 見つける

                        園長 佐 竹 和 平 
 現在行われている幼稚園教育要領の改訂は前回の改定から10年が経ち、この間、社会の環境、子どもたちの置かれている環境が大きく変化しており、且つ、その変化はこれからも進むであろうことを見越しての改定となります。幼児教育のみならず小学校、中学校、高校、大学の教育要領も改訂していこうというもので大掛かりな教育改革となります。その狙いは幼児期の教育からその質を高め、成長と共に多くの能力(21世紀型能力)を身につけ、「生きる力」を持つ人、社会に貢献できる人材を育てようということになるようです。

 教育要領の中では、小学校入学前までに育ってほしい姿として、10項目が挙げられています。
  ①健康な心と体 
  ②自立心 
  ③協同性 
  ④道徳性・規範意識の芽生え 
  ⑤社会生活との関わり 
  ⑥思考力の芽生え 
  ⑦自然との関わり・生命尊重 
  ⑧数量・図形、文字等への関心・感覚 
  ⑨言葉による伝え合い 
  ⑩豊かな感性と表現 
これらのものが幼稚園生活の中で育まれるべきものとされています。

 このような成長をするために教師のあるべき姿として「教師は幼児との信頼関係を十分に築き、幼児が身近な環境に主体的に関わり、環境との関わり方や意味に気づき、これらを取り込もうとして、試行錯誤したり、考えたりするようになる幼児期の教育における見方、考え方を生かし、幼児と共によりよい教育環境を創造するように努める。」と新しい教育要領には記るされています。(太字部分が今回の改正で追記されたもの)

 5月のカリキュラムのテーマは「見つける」となっています。少しずつ慣れてきた幼稚園生活の中で子どもたちはいろんなものを見つけています。楽しい先生、遊んでくれる先生、優しい先生を見つけます。気のあう友だちを見つけますし、気の合わない友だちも見つけます。好きな遊び、好きな場所を見つけます。良いもの、悪いもの、いろんなものを主体的に見つけるその経験が子どもの成長に大切なのです。大人が先回りして“見つけさせる”ような環境をつくる、先に答えを伝えるのではなく、子どもが主体的に“見つける”ことができる環境を大切にする月となります。

 子どもの幼稚園生活もいよいよ深まってきた感のある5月です。保護者の皆様の活動も活発になります。お子さんのみならず保護者の皆様も幼稚園でいろんなものを見つけて、楽しく過ごされるよう願っています。

2017年 4月 出会う

                   園長 佐 竹 和 平 
 ドレーパー記念幼稚園はキリスト教保育連盟に所属しており、カリキュラム(教育課程)はこの連盟の資料に基づいて決められます。今年度の年主題は「愛されて育つ」となっています。それは年主題聖句「あなたがたは神に愛されている子どもです。(エフェソの信徒への手紙5章1節)」を基に定められたものです。「愛される」とは「大切にされる」ということでしょうか。「神様に愛されている子どもを、私たちも愛して育てる。神様に大切にされている子どもを、私たちも大切に育てる。」というのが今年の主題です。子育ては時に大変で、辛いとき、苦しむ時もあります。「愛すること」「大切にすること」を忘れてしまうことがあるかもしれません。そのような時にこの年主題を思い出して欲しいのです。目の前にいる子どもは「神に愛されている、大切な子ども」だということを。

 この年主題「愛されて育つ」を基に毎月の主題が定められ、4月は「出会う」となっています。4月は新しい出会いが与えられる月です。様々な出会いがあるでしょう。この出会いこそが人生を豊かに喜びにあふれたものにしてくれます。初めてのお友達、初めての先生。みんなで遊ぶこと、歌うこと、食べることの楽しさとの出会い。子どものみならず保護者の皆様にも新しい出会いが多くあることでしょう。、一生の友だちに出会うこともあるかもしれません。新たな自分に出会うかもしれません。園長としては保護者の皆さんにはせっかくドレーパー記念幼稚園に関わっているのですから、聖書、教会に出会って欲しいと願っています。そこに、神様、イエス様との出会いがあり、喜び、祈り、感謝の日々が導かれると私は思います。聖書は昔に書かれた書物です。しかし、その内容は決して古びず、今もそれを読む者に生きる力を与えてくれているので、世界中で読まれているものです。聖書の中にはこのように書かれています「聖書はすべて、神の霊の導きの下に書かれ、人を教え、戒め、誤りを正し、義に導く訓練をするうえに有益です。(新約聖書テモテへの手紙2 4-16)」

 2017年度のドレーパー記念幼稚園の歩みは園児100名とその保護者、教職員16名による生活です。園児のみならず、保護者の皆さまにも教職員にも楽しい幼稚園生活となるよう園長の私はこの年も多くの皆様のお力添えをいただきながら幼稚園運営にあたって参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

2017年 3月 希望 

                    園長 佐 竹 和 平 

2月から3月にかけて園長会食が行われました。卒業を控えている5名の年長さんが園長の部屋に来て一緒にお弁当を食べます。幼稚園での出来事、みんなの好きなものなどの話をして楽しく過ごします。
ある日の会話・・恋の話が盛り上がった流れで・・

園長 「A君は大人になったら誰と結婚したい?」
A君 「俺はB君と結婚する!」 (B君・・苦笑い・・)
C君 「俺は鉄棒と結婚する!」 (鉄棒が得意な子なのです)
B君 「鉄棒は冷たくね!?」 (たしかに・・ひやっとします)
園長 「だったら・・こたつと結婚したらいいんじゃない?」(良いこと言ったつもり・・)
B君 「こたつは夏はじゃまでしょ! エアコンが良いよ」(確かに・・・)
C君 「じゃあ 俺、エアコンと結婚する!」 (納得しちゃった・・)

空想、想像と現実を織り交ぜにして物事を考えられるのは、この時期の子どもが持っているとても素敵な能力で、残念ながら大人になるとこのような能力は失われていってしまいます。こんな素敵な、楽しい子どもの声をしっかり聴き取っていきたいと思います。

「根っこを育てる幼稚園」という表現を使わせていただいています。根っこがしっかりと育ってないと、後で伸びることが出来ない、花を開き、実をつけることができません。花や実のことを焦って考えすぎずに、幼稚園ではこの根っこをじっくり、大切に育てますよという思いです。この“根っこ”とは何かというと教育的用語としては“自己肯定感”ということになります。自分は自分で良いという考えを持てるようになるということです。この自己肯定感を育むのに必要なことは子どもの話を聞いてあげることです。もっと言うと〝聴き取る″ことです。自分の言うことを聴き取ってもらとうれしいです。聴き取ってもらうと、もっと表現しようとしますし、人の話しも聴くようになるのです。聴き取ってもらうと、自分が愛され、大切にされていると知るようになるのです。保育者、保護者が子どものためにやるべきことは子どもの言うことを聞き流すのではなく、聴き取ることが大切なのです。

今年度最後、3月のカリキュラムのテーマは「希望」となっています。希望とは信じることです。どんな状況にあっても大丈夫と信じることです。信じることができる自分になるために必要なことは自分が神様と人に愛され、神様と人を愛してきた経験と実感です。年長さんは幼稚園を卒業し小学生になります。年少、年中さんはそれぞれ進級します。
4月から新しい環境になります。最初は不安、戸惑いもあるでしょう。でも、大丈夫です。この一年でみなそれぞれの根っこが育ちました。
家族、友だち、保育者、神様に愛されて育ったこの一年です。希望に満ちあふれた子どもたちが目の前にいます。この時を共に喜び合えることに感謝です。