主体性 ~子どもの心の声を聴く~ 園長 佐竹 和平
夏休み期間中に受講した研修で、「主体性」について学ぶ機会がありました。
一般的に主体性というと、子どもが自ら進んで活動に取り組み、積極的に発言したり行動したりする姿がイメージされます。たとえば、友達を誘って新しい遊びを始める、先生に言われる前に片付けをする、椅子取りゲームに元気いっぱいに参加する――こうした姿は、わかりやすい主体性の現れといえます。文部科学省の定める幼稚園教育要領の中でも主体性はとても大切なものと位置づけられています。
しかし、研修で学んだのは「目に見える行動の結果だけが主体性ではない」ということでした。実は、行動には表れていなくても、子どもが自分なりに考え、自分の意志で決めていることもまた、立派な主体性なのだというのです。
たとえば、教室で椅子取りゲームをしているときのこと。多くの子が楽しそうに参加している中で、輪に加わらず見ているだけの子がいます。大人から見ると「恥ずかしがり屋なのかな」「消極的なのかな」と思うかもしれません。でも、その子の心の中では「やってみたいな」「でも負けたら嫌だな」「今日は見ていたいな」「いつかやれたらいいな」といった複雑な思いが行き交っているのです。水たまりに飛び込むお友だちを見て、「面白そう、やってみたいな、でも、汚れたらお母さんが怒るかな・・・やめておこう(でも、やっちゃおう)」。このように子どもの中には相反する思いがあります。それは自分の中に沸き上がった感情と反対の思い、社会のルール、規範意識、周りの人への思いやりなどで、このような心の葛藤があるのです。これは子どもに限らず大人にもあることです。行動には現れていなくても、「どうするか」を自分で考えて選んでいる、ここに、もう一つの主体性、とても大切な主体性があるのです。
子どもは、それぞれのタイミングで心の準備を整え、少しずつ前に進んでいきます。
昨日まで輪の外からじっと見ていた子が、ある日から、誰よりも元気に椅子取りゲームに参加する姿を見せてくれることもあります。大人からすると急な変化のように見えても、その子の中では少しずつ気持ちが育ち、葛藤を乗り越え、自分を納得させた上で、行動に結びついたのです。
子どもたちの成長は、目に見える部分だけでは測れません。一見、活動に消極的に見えるときも、実は心の中で豊かな主体性が育まれている。私たち大人は、その子どもの声を聴き、見守り、支え続けましょう。そして、子どもが、主体性をもってやるべきことに対して「やってみよう!」と自ら一歩を踏み出すその瞬間を、共に喜び合いたいと思います。