園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

2022年 7月

幼児期の集団での学び                 園長 佐竹和平

 日本には春、夏、秋、冬と四季があり、それぞれの季節にその良さがあります。梅雨が開け、7月、夏となりました。最近の日本の夏はその良さよりも、高温による熱中症の被害や、ゲリラ豪雨などによる自然災害などのマイナスの面が際立ってきています。しかし、幼稚園での生活では夏ならではのことを楽しみ、夏ならではの体験を子ども達にはしてほしいと願っています。

 ドレーパー記念幼稚園ではこの時期、園庭に川が造られます。日によっては1本ではなく、2本、3本の川が出現することもあります。水を流し、その水の流れに沿って土を堀り、川を作り、支流を作り、ダムをつくったり、土手を作って、道路に水が流れるのを止めたり。さながら、河川工事の様です。水に触れ、土に触れて遊ぶ子どもたちの姿がとてもまぶしく見えます。

 「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」(R・フルガム著)という本があって、その著書には、「何でもみんなで分け合うこと」「ずるをしないこと」「人をぶたないこと」「使ったものは必ず元のところに戻すこと」「散らかしたら自分で後片付けをすること」「人のものに手をださないこと」「誰かを傷つけたらごめんなさいを言うこと」「食事の前には手を洗うこと」「トイレに行ったらちゃんと水を流すこと」・・・。生きていく上で大切なことは大学で学んだのではなく、幼稚園時代の砂場での遊びなどを含めた生活の中で学んだものだったと書かれています。

 家庭とは違って、幼稚園は集団での生活になります。家とは違って順番により我慢しないといけないことや、年齢差や個体差による力関係によって我慢しないといけないことがあります。歌う時、絵を描く時、お祈りする時などみんなで一緒の行動をしないといけない時間があります。集団での生活には家とは違うルール、規範が自ずと必要になってきます。

 規範意識や世の中でのルールは一方的に教えられるものばかりではなく、自分が不快だと思う中で自らが気付き、また、他者の行動を見て、まねることによって習得しいくものもあります。そこに家庭では得られない、集団での学びがあります。一人ひとりの成長があるのです。

 年々、日本社会のみならず、世界全体が何か殺伐として、人間性が失われているような事件が起きたりもします。幼児期に保育者、保護者、社会がこの子どもたちの遊びを通じた学び、集団での学びをしっかりと確保できるようにし、人生に必要な知恵をしっかりと身に付けられるようにすることがとても大切なことのように思われてなりません。