園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

2017年 2月 信頼

信頼               園長 佐 竹 和 平
 
 日本の子どもたちの読解力の低下が著しいと新聞に載っていました。経済協力開発機構による調査では15歳の読解力が4位から8位に下がってしまったようです。学校での試験では問題文の内容自体が理解できないために答えられないケースも多くなってきているとのこと。教育現場のみならず職場でも新入社員の読む力、書く力の低さに頭を悩ませている企業も多いとか。このような読解力、国語力の低下もここ最近の事ではなく、「活字離れ」ということと共にもう何年も前から言われてきていましたが、ここ数年のスマートフォンSNS・ライン・ツイッターの普及がその速度を速めているのでしょう。

 「知ることは感じることの半分も重要ではない」という言葉はアメリカの生物学者で1960年代に「沈黙の春」で地球環境の保護を訴えたレイチェル・カーソンがその著作「センス・オブ・ワンダー」の中で述べられたものです。「感じることが大切」で知ることは後からということです。子どもは生まれながらに「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」を持っています。そうした感性を育むには、感じたことを分かち合ってくれる大人がそばにいることがなによりも重要だというのです。

 寒い日に子どもが寒いと感じたら一緒になって「寒いね〜」と、きれいなものを見て子どもがきれいだなと感じたら一緒になって「きれいだね〜」と、一緒に絵本を読んで面白かったら、一緒に「面白かったね〜」と言い合う体験。そのような体験を通じて感動することの喜びを子どもは自分のものにしていくのです。子どもと一緒に感動する。そのことから始めましょう。感動するからその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになるのです。そのようにして見つけだした知識は、しっかり身につきます。これが知識欲を育む道筋となります。活字離れ、国語力の低下を食い止めるには幼児期に感動する心をしっかり育み、成長の過程で知ろうとする意欲を定着させることが大切なのです。

 2月のカリキュラムのテーマは「信頼」となっています。幼稚園では保育者と子どもの信頼関係を築くことからスタートして、子どもが安心して生活できる場所としての幼稚園であるようにします。その安心して生活できる幼稚園の中で子ども同士の信頼関係が育まれていきます。人を信頼し、人に信頼される経験をしていくなかで成長していきます。信頼関係はどのようにして築かれて行くのでしょうか。先に記したのと同じです。一緒に感動することの中から信頼関係は生まれて行きます。せっかく子どもと一緒にいるのに大人がスマホを見ているようでは一緒に感動することはできません。子どもたちの世界は大人と違って新鮮で、驚きや発見に満ちあふれています。一緒に感動しましょう。子どもとの信頼関係をこの幼児期に確かなものにしていきましょう。