園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

2015年 9月 きもちがいい

きもちがいい        園長 佐 竹 和 平 

 「五体不満足」の著者の乙武洋匡さんの最近の著作「自分を愛する力」は自分のことを大切な存在と自分で思える“自己肯定感”をテーマに書かれているもので興味深く読むことができた。手と足が無い状態で母体から生まれ出てきた赤ちゃんの乙武さんを産婦人科の医師はをすぐに母親に会すことができず、母子が対面したのは出産から一か月後のことでした。手も足も無いわが子を抱いて母親が最初に発した言葉は「かわいい」でした。手と足がありません。ですから出来ないことがたくさんあり、幸せな人生をおくることができない・・そう思えば「かわいい」ではなく「かわいそう」が正直な感想になるかもしれませんが、そうではなく「かわいい」だったのです。子どもとの初対面にかけた最初のこの「かわいい」の言葉が乙武さんの自己肯定感が育まれるスタートとなりました。

 その本の中では金子みすゞの「私と小鳥とすずと」の詩が紹介されていたのですが、その読み取り方が乙武さんならではの価値観に基づくものでなるほどと思わされました。「人それぞれに個性があって、みんな違っていてもいいでしょ。」と謳い上げるこの詩ですが、その個性とは「出来ることもあるけど、出来ないこともある」ということです。「できないことがある個性」を認めていきましょうという詩であるとの解釈です。

 とは言っても、出来ないよりも、出来る方が気持ちがいいです。子どもの成長とは出来ないことが出来るようになることです。子どもの出来ることを増やして欲しいと保護者の皆様も幼稚園に望んでおられるでしょう。もちろん、その期待に応えられるよう日々の保育には取り組んでいます。集団での学び、様々な体験を通じて出来ないことが出来るようになることは、子ども自身にも、保護者、保育者にとっても気持ちの良いものです。しかし、全てが出来るようになることはありません。成功することもありますし、失敗することもあります。出来ないことを厳しく咎め、否定したところで出来るようになるわけではありません。出来ないことがあっても良いのです。苦手なことがあってもいいのです。お子さんが出来ないこと、苦手のことがあってもそのことを気持ちよく受け止められるようにしたいものです。その「出来ないこともある個性」を認めていきましょう。そして、出来たことがあれば褒めてあげるのです。

 失敗しても成功しても、出来ても出来なくても、いつも暖かくそばでその存在を認め、励ましてくれる保護者、保育者に育まれ、“大切にされている自分”を存分に生きていくことができる人になっていくのです。