園だより 園長からのメッセージ

毎月、発行している園だより 園長からのメッセージ

1月 守られて

                       園長 佐 竹 和 平 
 毎月のカリキュラムの中にある【願い】とは、このような経験を子どもたちにしてもらいたいという願いであり、教師はこの願いが叶えられるような環境づくりをしていく必要があります。「環境」というのは幼児教育における重要な単語で、幼稚園教育要領には「幼児教育は幼児期の特性を踏まえ、環境を通して行うもの」と示されています。ここで言う「環境」とはその子の周りにあるもの全てです。園庭ではブランコやすべり台などの備え付けの遊具、スクーターやシャベルなどの遊具、砂場、土、水、木、花、動物、太陽・・・。 室内ではピアノ、机、おもちゃ、壁面、絵の具、クレヨン、ねんど、絵本・・・。環境の中には人(友だち、異年齢の子ども、保護者、教師)も含まれます。かけっこ、歌、礼拝、お弁当なども環境です。教師はその日、そのクラス、その季節、その気候を考慮し、子どもが育っていく過程において必要な体験ができるような環境づくりを心がけています。保護者の皆様にもこの環境作りにご理解、ご協力いただいていることも多くあります。

 1月の願いの中に「繰り返し取り組むことで、原因を見つけたり、コツをつかんだりする」とあります。この時期には環境の中に「こま」が入ってくることを想定しての「願い」です。幼稚園では年齢、段階に併せて異なるこまで子どもたちは遊ぶことになっています。年少さんは手のひらを使って回すこま、年中さんは引きごま、年長さんは投げごまです。それぞれの年齢にとってちょうど良い難しさがあります。ここでの環境は「こま」があると言うだけではなく、こまが回せる子がいる、回せない子がいる。年少中児から見ると年長さんのこまは難しそうで、あこがれを持ち、年長になったら出来るんだと期待を持ちます。年長児にしてみると、年中、年少のこまはもう体験済みという自信があることも環境に含まれます。教え合う、見せ合う、喜び合う環境があります。そのような環境の中で「繰り返し取り組むことで、原因を見つけたり、コツをつかんだりする」という体験をしてもらいたいというのが「願い」なのです。単にこまが回れば良いというのではなく、この経験を通じて、生きていく力を養って欲しいという願いなのです。

 「健康に過ごすための生活習慣を身につける」ではこの時期、インフルエンザ、風邪などが流行しますが、早寝、早起き、食事、うがい、手洗い、歯磨き、顔洗い、衣服の選択、着脱などを子どもが自分の判断でできるように育つ環境作りが求められます。

 「神様が守り、導いていることを知る。」という「願い」も示されています。クリスマスを経て、神様が私たちにイエス様を授けてくださったことの意味を知り、共に喜ぶ経験をした子どもたちです。今一度、丁寧に「あなたは神様に守られ、導かれている大切な子です」というメッセージが子どもたちに伝わるよう願っています。

12月 賛美

                      園長 佐 竹 和 平 
 
改めて考えて見ると体全身を使って登るような場所は園庭にも近所の公園にも無いので子どもにとっては大いに刺激になるのであろう。年長の教室と階段にロフトを作ってみた。園庭にはボルダリングと階段梯子で登るボックスを作ってみた。登るのが好きな、挑戦することが好きな子どもたちの姿がみられた。

 「感覚統合」という言葉があって、私たちはいくつもの感覚を持っていて、それを統合させて日常の生活をしていることになっています。脳に送られてくる様々な情報を必要な物と不要な物に整理し、関連づける作業、統合した結果が私たちの日常の動作と言うことです。道を歩いていて目の前に石ころがあるとする。石ころは目の前以外にもいくつもあるが、目の前の石は情報としては大切な物で、そのまま踏んでもいいか、避けるか判断しなければならない。判断した結果、足の着地点を石を踏まない場所に少しずらす作業を行っているのです。

 乳幼児はこの感覚統合を発達させる段階です。そして、登る、降りるの際には一生懸命、感覚統合をしているのです。手をどこにかけたら良いか、その次に足はどこに持って行けば良いか。その次の手は、足は・・と様々な情報の中から今自分に必要な情報を取捨選択して、体を動かすのです。最初は登れなかったのに、何度か挑戦したら登れるようになったということは、感覚統合を上手く行えるようになったということなのです。

 この感覚統合という作業はとても大切なことで近年では感覚運動遊びという表現もなされるようになって、子どもたちの成長を促す視点の一つになっています。子ども自らがやりたいという気持ち(主体性)を持って行う全身を使った楽しい遊びを通じて自分に今必要な情報は何かを選択しつつ、体を動かす。上手くいけば達成感が得られ、出来なかった際には次には出来るようになろうという意欲を持つようになるのです。
 
 12月のカリキュラムのテーマは「賛美」となっています。ドレーパー記念幼稚園ではクリスマスの礼拝と共に全園児で取り組むページェント(聖誕劇)があります。神様が私たちを救うために、私たちに平和をもたらすためにイエス様をこの世に贈ってくださいました。そのことを喜び、感謝するこのページェントは聖歌隊による賛美により劇が進み、最後には全員で声高らかに「もろびとこぞりて」を賛美します。子どもたち保護者の皆様と共に神様が私たちに下さったイエス様の誕生クリスマスを期待を持って迎えたいと願っています。

2017年 11月 一緒に

                      園長 佐 竹 和 平 
 

 以前にも書いたのですが、大切なことなのでまた記させていただきます。新しい幼稚園教育要領にある「教師のあるべき姿」についての部分。

『教師は幼児との信頼関係を十分に築き、幼児が身近な環境に主体的に関わり、環境との関わり方や意味に気づき、これらを取り込もうとして、試行錯誤したり、考えたりするようになる幼児期の教育における見方、考え方を生かし、幼児と共によりよい教育環境を創造するように努める。』(太字部分が今回の改正で追記されたもの)

 主体的、主体性とは自分の意思、判断で行動することです。太字の追記した部分を抜かして読むのと、太字の部分も読むのとでは大きく異なっていることにお気づきになるでしょう。集団での生活の中では一人ひとり異なる個性、能力があり、異なる主体性があります。そのような中で、どうしたらこのような教育が出来るのか、今、幼児教育の現場、その責任者の園長にはその重責がのしかかってきています。
 
 そのような折、園庭、遊具の研究をされている方のお話を聞く機会がありました。単なる運動能力を鍛えるための遊具、友だちと楽しく過ごす場所としての遊具ではなく、子ども自身のやりたい気持ち、難しいことに挑戦したい気持ち、目標を達成したい気持ちを考えて遊具を整備されている方のお話です。3階建ての高い木のタワーがあり、高さ2メートルの所にある一本橋もあります。どれも簡単にできるものではありません。子どもたちが挑戦している動画も見ました。中には達成に一年かかる子もいるそうです。誰に言われるでもなく、自分の心の中にある、やりたい気持ちが見られました。

 その話しを受け、ドレーパー記念幼稚園の園庭を見渡すと、挑戦するような遊具が少ないことに気づきました。そこで、まず取りかかったのが「のぶらはむのいえ」です。登りにくくしてみたのです。多くの園児にとって、今までは簡単に登れたので、挑戦する気持ちも必要ありません。2階に行っても、3階に行っても特段の達成感も優越感もありません。しかし、登りにくいとなると少数の者しかそこにいけないのです。挑戦したくなります。挑戦してもできなくてあきらめる子もいます。できなくてもまた、挑戦する子もいます。

 幼稚園教育要領にある幼児が環境に主体的に関わる・・試行錯誤・・というのが見えてきたように思います。なお、挑戦しているときは子ども自身が試行錯誤している最中です。成長している最中です。大人がその方法を教えたり、手伝ったりしたらせっかくの機会を失うことになるのでご注意ください。園内の遊具の整備は子どもの動きをよく見て、怪我の無いように配慮しつつ進めていきます。また、遊具に限らず、子どもの育ちと環境の関係をよく観察し、幼児の主体性を重んじる教育の充実を図れるようにと思っています。

 11月のカリキュラムのテーマは「一緒に」となっています。4月から一緒に遊び、一緒に歌い、一緒に笑い、一緒に祈り・・・と子どもたちは一緒の生活をしてきています。2学期になり、運動会を終えるとこの一緒がさらに深まり、園児フェスティバル、クリスマスへと・・子どもたちの生活はさらに充実したものとなっていきます。

2017年10月 動く

                      園長 佐 竹 和 平 
 
 運動会では子どもたちの成長している姿、最後まであきらめずに頑張っている姿、友だちを応援し、励ます姿を見ることができてうれしかったです。特に各学年のダンスは子どもたちの成長を見るよい機会となりました。年長さんのダンスは難しい隊形移動も、子ども同士で声をかけあいながら行っていました。衣装も自分たちで作った物で、楽しそうにみんな踊っていました。年中さんのダンスは「OK!」の掛け声とともにみんなリズムにのって体を動かしていましたね。バンダナを気持ちよさそうにグルグルまわしていました、自分たちで作った腕につけたブレスがキラキラで素敵でしたね。年少のひよこ組のダンスはかわいいパンダさんでした。練習では踊れていたのに、お客さんがたくさんいたからか、踊らずにいた子もいましたね。でも、大丈夫、来年はきっと踊れるようになります。年中さん、年長さんの姿がそれを示してくれていました。

 運動会は種目によっては競い合いもしますが、その多くは競い合うの反対の協力し合うものとなっています。一人ではできないこと、みんながいて、協力しあうからできることを楽しむのが運動会です。年中さんのパラバルーン、年長さんの組み立て体操、リレーなどは協力しあう喜びを体験を持って自分のものとする競技です。このような経験により、これからクラスとしてのまとまりが今まで以上に出てくるようになります。

 10月のカリキュラムのテーマは「動く」となっています。子ども自身が主体的に「動く」ことが大切です。朝、子どもが目を覚ます。起きて顔を洗い、ご飯を食べる。トイレに行って、歯を磨いて、服を着て、幼稚園に行く準備をする。この朝の日常の中であなたのお子さんは動いていますか?それとも動かされていますか? 保護者の皆さんの中には子どもを動かせすぎている方もいるかもしれません。やるべきことを伝えて、子どもを動かすほうが簡単ですが、そのようにしていると言われたことだけしかしないようになっていくかもしれません。子どもが自主的に動く環境、言葉がけを心がけていきましょう。

 幼稚園では子どもが動きたくなるような環境を作っていく必要があります。動くのは何も身体だけではありません。心も動くような環境を作って行かなければなりません。運動会を終えて仲間意識も強まりました。外での遊び、室内での遊びもその内容が深まって行く時期です。ますます楽しい幼稚園生活が導かれるよう教職員一同、心を合わせてまいります。

2017年 9月 試行錯誤

                    園長 佐 竹 和 平 
 夏休みの思い出がたくさん詰まった思いで帳をみさせていただくのが9月の楽しみです。おじいちゃん、おばあちゃんの家に行ったこと、花火を見たこと、相鉄線のスタンプラリー、恐竜展など・・今年の夏は雨の日が多くありましたが、それぞれ楽しく過ごされた様子がうかがわれます。様々な経験をしたこともあってか、子どもたちは夏休み期間中にずいぶんと成長したようです。

 今月のカリキュラムのテーマは「試行錯誤」。元々はアメリカの心理学者が「Trial and error」という人間の能力獲得の過程に関する学説を打ち立てたその訳語です。試してみる、失敗するという意味です。人間は何かの能力を身に着ける際には試してみて、失敗をして、また試してみて失敗をして・・その多くの失敗の中に偶然に成功が現れると、その成功を反復して行うようになるという学説です。発明家のエジソンの言葉には「それは失敗じゃなくて、その方法ではうまくいかないことがわかったんだから成功なんだよ。」とあります。赤ちゃんがハイハイをして、立って、歩くようになる。子どもの成長過程を思い起すとまさに失敗、失敗、失敗・・試行錯誤です。しかし・・いつの間にか出来るようになっていきます。失敗が大切なようです。

 「ほめるのは1秒以内、怒るのは3秒待って」ということを学びました。子どもの良い姿を見たときはその瞬間にほめてあげましょう。一方で怒りたくなる場面があったら3秒待って・・冷静に対応しましょうということ。失敗したからと行ってすぐに怒っていては子どもは失敗するのが恐くなって失敗しそうなことはしない、試行をしない子どもになってしまいます。子どもの失敗をいつか出来るようになるための成長の過程と思い、温かいまなざしで見守れるようだといいですね。

 2学期が始まりました。行事も多く、子どもたちの幼稚園生活がいよいよ充実してきます。保護者の皆様にもご理解とご協力をたくさんいただかなければなりません。試行錯誤が深まる2学期でもあります。共に試行錯誤の時を楽しく過ごしていきましょう。

2017年 8月 ゆったりと

  
ゆったりと                       園長 佐 竹 和 平 

 児童精神科医佐々木正美先生が6月にお亡くなりになられていたことを遅ればせながら知り、その著書「子どもへのまなざし」を改めて読み返してみた。この本は1998年に発行され、子育てに悩む多くの親を励まし、勇気づけベストセラーとなった本です。佐々木先生による子育ての要諦は「過保護は良い、可能な限り子どもの満足を親がかなえてあげようとすることは子どもの現状を肯定することにもなる。子どもは自分が良いものとして育てられるので自立心、自尊心のある子に育っていく。しかし、過干渉はいけない。子どもがやりたいことをやらせないで親がしてしまう、子どもがやりたくないことを親がさせてしまうのは子どもの現状を否定していることになる。このように育てられた子は自分っていいなぁという感情、自己肯定感が育まれないため健やかな成長が見込めなくなる」というものです。

 過保護と聞くと必ずも良いイメージがないかもしれません。甘やかして育てるといった印象があるようです。しかし、上記したように過保護と過干渉の違いをしっかりと認識して、大切なお子さんを自信を持って過保護に育て、自己肯定感のある子、自分って良いなと思いながら育つ子にしていきましょう。

 今月のテーマは「ゆったりと」となっています。8月は夏休み期間中ですから、ご家族とゆったりと過ごして欲しいという願いでしょうか。佐々木正美先生の言葉に『ぶったり、無視することは子どもたちを否定することですね。これは誰でもわかります。しかし否定とはそれだけではありません。子どもの個性を認めない。「早く!」と言い続ける。あるいは「もっと、もっと」と過剰に期待をする。そういったことも否定です。子どもは、自分が否定されていると感じます。』とあります。親としては子どもに期待することが大きくもあり、結果として子どもをせかしたり、短所ばかりに目が行き怒ってばかりということもあるかもしれません。ゆったりとした気持ちになって、子どもの良いところに目が行くようになれるといいですね。

 さて、いよいよ、2学期が始まります。行事も多くあり、子どもたちにはやらなければならないことがたくさんあります。しかし、やらされてその行事の日を迎えるのではなく、やりたいことをやった結果としてその行事を迎えられるように教職員一同が力を合わせてまいります。保護者の皆様にも引き続き、多くのご理解とご協力をいただくことになります。どうぞよろしくお願いします。

2017年 7月 気持ちよく

                       園長 佐 竹 和 平 
 80歳になる私の母がこの度、自分の人生を綴った本を出版しました。「あなたに平安がありますように(大空社出版):佐竹順子」。キリスト者としての歩み、社会福祉事業へのかかわり、7人の子育てなどについて記した本です。園長の私は7人兄弟の6男、下に弟がいて、全部で7人、みんな男です。6男の私までは年子です。せっかくなので母の本の中で、子育てで大切なこととして記されているもののいくつかを紹介させていただきます。

・子どもと接するときは、決してイライラさせないように心がける。ゆったり受け止める。
・決して過干渉にならない。
・自分で考えて判断できるようになるために子どもの人格を信じ、信頼関係を築く。
・親としての最も重要な役目は子どもの背後で祈ること。

 改めて、思い起こすと、幼少期、思春期と今日にいたるまで、私は母に叱られたことがありません。きつく注意されたこともありません。以前紹介した、幼稚園教育要領の改正では「「教師は幼児との信頼関係を十分に築き、幼児が身近な環境に主体的に関わり・・」とありますが、母の本の中に同じような記述があることに驚かされます。

 子どもはその多くを大人に依存していますが、成長するにつれ自立していく必要があります。そのときに必要な能力が主体性、自らの意志や判断に従って行動できる能力です。大人が子どものためと思って何でも手出し、口出しをし、過干渉になると、子どもの中に本来ある主体性が芽生えていきません。子どもとの信頼関係を築きながら子どもの姿を励ましつつ、背後にあって、見守り、祈ることでこの主体性が伸びるのを待ちましょう。

 さて、7月のカリキュラムのテーマは「気持ちよく」です。7月ということもあり水遊びをイメージするテーマでしょうか。水や砂、土の感触で気持ち良いと感じる子どもたちです。でも、「気持ちいい」ではなく「気持ちよく」がテーマとなっているので、どうやら水あそびだけを意識したものではないようです。友だちとのこと、クラスのこと、家族、夫婦、職場・・「気持ちよく過ごす」ために一人ひとり、自分に何が出来るか、何に注意を払う必要があるのかを改めて考えるよい機会としていきましょう。